数学で勉強することは、習うまで知らないようなことばかりですね。
例えば、ただ生活しているだけではサイン・コサインや三平方の定理などには気づかないでしょう。
授業や教科書で公式や定理があるのを初めて知って「へ~、そうなんだ」と思うものです。
ですが、実は
“だれでも直感的に知っているようなことだけど、数学的に重要で、名前がついている”
という原理があります。
それは【鳩ノ巣原理】というものです。
これは学校ではほとんど習わないものですが、とても面白いものですのでぜひ以下の概要を読んでみてください。
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鳩ノ巣原理の内容を、数学的な言い方をすると以下のようになります。
「一般に、m 個のものを n 個のグループにわけるとき、
m が n より大きいなら、必ず2つ以上のものが属するグループが存在する。」
となります。
このままだとよく分からないかもしれませんので、具体例を出してみましょう。
(具体例)
「巣穴が5つ(=n)ある鳩の巣があるとします。
ここに、6羽(=m)の鳩が飛んできたとします。
そうすると【鳩ノ巣原理】より、巣穴5つに対して鳩が6羽なので、かならず2羽入る巣が存在することが分かります」
これが鳩ノ巣原理の具体例です。
どうでしょうか。「そんなのあたりまえじゃん!」と思いましたよね(笑)
しかしこの当たり前のことに名前がついていて、
そして、この原理で解ける問題がいくつもあるんです。
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鳩ノ巣原理を使うことのできる問題を一つ見てみましょう。
(問)10個の球それぞれに1~10まで数字をふってカゴに入れ、中身を見ないで6つ取り出します。
取り出した球のなかには、偶数の球が必ず含まれることを証明せよ。
状況:カゴ{①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩}←6個取り出す。偶数の球が必ず出る?
(少し考えてみて下さい。当たり前のことに思えるかもしれませんが、証明となると難しいかもしれません)
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(ヒント)
逆に、偶数の球を取らないように、奇数の球を小さい順から取っていったとします。
1回目に①、2回目に③、3回目に⑤ 4回目に⑦ 5回目に⑨ ……
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(解答)
1から10までの数字のうち、奇数は5つしかありませんね{①③⑤⑦⑨}。
もし6回球を取ったにもかかわらず、奇数しか出なかったなら、
鳩ノ巣原理より{①③⑤⑦⑨}のいずれかの球が2つあったことになります。
これは問題の設定と矛盾します。
よって、6つの球をとりだしたら必ず偶数の球が1回は出ることがわかります。
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いかがでしょうか。鳩と巣の例で言うと、今回は球を取り出す手が「鳩」、球が「巣」の役割でした。
目の前の問題において、なにが「鳩」でなにが「巣」かを見極めることがポイントです。
さて、皆さんの中には数学を
「まったく初めて知ることばっかり!」と思っている方もいるかもしれません。
たしかに、教科書で見る公式などは、一見すると堅苦しくて馴染みのないものです。
ですが、今回下鳩ノ巣原理のように、身近な事柄をあらわしているものも多くあります。
実は、サイン・コサインも三平方の定理も、二次方程式や関数も
それらしきものは生活のあちらこちらで出会います。
そういった概念や原理について、定義を与えて明確にするのが数学と思えば、
少し数学の世界に興味がわいてきませんか?
今回の記事で、少しでも数学の楽しさを感じていただけてたらうれしいです。