一見どれも同じに見える緑の植物たち。
実は、彼らは私たちが想像する以上に、生き残りをかけた激しい頭脳戦を繰り広げています。
それは光合成のやり方(回路)の違いです。
植物には「光合成のために空気の穴(気孔)を開けたいけれど、開けると体の中の水が逃げて干からびでしまう」という命がけの大問題があります。
このピンチを切り抜けるために植物たちは環境に合わせて3つの作戦を編み出しました。
1つ目は、イネやアブラナなど、全体の9割の植物が使う「C3(シースリー)作戦」です。
水がたっぷりある穏やかな環境なら、この作戦が一番シンプル。
ムダなエネルギーを使わずに、のんびりコスパよく育つことができます。
2つ目は、トウモロコシやサトウキビなどの「C4(シーフォー)作戦」です。
暑くてカラカラに乾燥した場所で生まれた彼らは、少ない二酸化炭素をギュッと体の中に濃縮して集める「特設ステージ」を作りました。
これなら空気の穴を少ししか開けなくても、サッと効率よく光合成ができます。
3つ目は、サボテンやパイナップルなどの「CAM(キャム)作戦」です。
絶対的に水が足りない砂漠で生きるために、彼らは「昼間は穴を完全に閉じて、涼しい夜の間に二酸化炭素を吸って貯めておく」という
昼と夜を逆転させたウルトラC作戦を編み出しました。
「じゃあ、みんな進化形のC4やCAMになればいいのに」と思うかもしれません。
でもハイテクな作戦を使うには、そのぶん植物もたくさんのエネルギー(コスト)を使わなければなりません。
そのため、水が豊かな場所ではシンプルなC3が一番お得ですし、砂漠のような過酷な場所ではコストを払ってでもCAMじゃないと生き残れません。
どれが一番強いかではなく、「自分がいる場所で一番お得に生き残れるのはどれか」をそれぞれが追求した結果、多様な光合成のやり方が生まれたのです。
植物の世界と同じように、人間の世界でも「誰かと同じ正しいやり方」が一つだけあるわけではありません。
自分が今置かれている環境で、自分の強みをどう活かして生きていくか?道端の草やスーパーに並ぶトウモロコシも、みんな一生懸命考えて生きています。
理科の教科書に載っている複雑な文字の後ろには、そんな植物たちの熱い生き残りドラマが隠れているんですね!