子どもは、大人が驚くほどの速さで言葉を覚えていきます。
生まれたばかりの頃は何も話せなかったにもかかわらず、数年後には家族と会話をし、自分の気持ちを言葉で伝えられるようになります。
年齢が上がるにつれ、大人になってから外国語を学ぶのは難しい、と感じませんか?
本当に子どもは特別な才能を持っているのでしょうか。
多くの人は、言葉は勉強して覚えるものだと考えています。
学校では単語や文法を学び、間違えないように練習するため、そのイメージを持つのも自然なことです。
しかし、子どもは教科書を読んで言葉を覚えているわけではありません。
毎日家族の会話を聞き、自分でもまねをしながら何度も話し、間違えては覚え直すことを繰り返しています。
つまり、子どもは「勉強」としてではなく、「生活」の中で言葉を身に付けているのです。
また、子どもは失敗をあまり恐れません。
言い間違えたり、文法が正しくなかったりしても、それを恥ずかしいとはあまり考えず、とにかく話そうとします。
そのたびに周りの大人が正しい言い方を自然に教え、子どもは少しずつ表現を修正しながら成長していきます。
一方で、大人は「間違えたら恥ずかしい」「正しく話さなければならない」と考えてしまうため、知識があっても言葉を使う機会を自分から減らしてしまうことがあります。
つまり、言語を覚える速さの違いは、能力だけではなく、失敗に対する考え方の違いにもあるのです。
高校で学ぶ英語でも、このことはよく表れています。
英単語や文法を一生懸命覚えても、実際に英語を読んだり聞いたり話したりする機会が少なければ、知識はなかなか身に付きません。
反対に、完璧でなくても英語に触れる時間を増やし、自分で使おうとする人は、少しずつ自然な表現を身に付けていきます。
これは子どもが母語を覚える過程とよく似ており、言語は知識として覚えるだけでなく、実際に使うことで初めて自分のものになるということを示しています。
さらに、脳の働きも関係しています。
子どもの脳は成長の途中にあり、新しい音や表現を柔軟に受け入れやすいことが分かっています。
そのため、発音やイントネーションも自然に身に付けやすく、大人より有利な面があるのは確かです。
しかし、それだけで全てが決まるわけではありません。
世界には、大人になってから外国語を習得し、仕事や研究で活躍している人も数多くいます。
つまり、子どもは「覚えやすい」という特徴はありますが、「大人は覚えられない」ということでは決してないのです。
子どもが言語を早く覚えられる理由は、「覚えよう」としているからではなく、「伝えよう」としているからではないでしょうか。
お腹がすいたことや遊びたいこと、うれしかったことを誰かに伝えたいという気持ちがあるからこそ、言葉は必要になります。
言語は試験で点数を取るために生まれたものではなく、人と人とが気持ちや考えを伝え合うための道具です。
その目的を忘れて暗記だけに頼ってしまうと、言葉は覚えにくくなってしまいます。
英語を学ぶときも、「間違えないこと」ばかりを意識するのではなく、「伝えること」を大切にしていきましょう。